
社会生活と他人との関わり
「人間にとって最大の不幸は話し相手がいないこと」という言葉があります。いうまでもなく、われわれ人間は、自分以外の人々と付き合いながら社会生活を営んでいます。
中には「わずらわしい人間関係に翻弄されるよりも、自分は孤独を好むタイプだ」という人もいることはいます。しかしながら、そういう人であっても、他人との交際を完全に断ち切って生活していくことはできないでしょう。
つまり人間とは、他人との関わりなく生きていくことができない動物なのです。
「仕事上では他人との交際はあっても、プライベートでは他人の干渉なしに生活していける」という人はいるでしょう。しかしながら、それも元気で働いていける年齢までです。
2010年調査の統計では、日本の高齢者の男性11%、女性20%が一人暮らしとなっており、2014年現在では、この割合はさらに上昇していることでしょう。そしてその中には、他人はおろか親戚縁者との付き合いさえなくなったお年寄りが、かなりの数がいるといわれています。
孤独感にさいなまれる高齢者
2014年現在、日本は人口の4人に1人が65歳以上という「超高齢化社会」に突入しています。マスコミなどでは、この「超高齢化社会」におけるさまざまな問題点が指摘されており、その対策が語られることが多くなってきています。
年金や医療・介護など問題は山積していますが、最も深刻な問題はそのような表層的な課題点だけでなく、当の高齢者の「心の問題」にあるといえるのではないでしょうか?
たとえば、80歳を超えてもなお健康な高齢者も少なくはありません。しかしながら、人間の精神の安定は、決して健康であれば問題がないというものではないのです。退職して金銭的にも健康面にも問題なく、一見悠々自適な隠居生活を満喫しているように見える高齢者であっても、話し相手のいない孤独な毎日が続くと、たとえようのない孤独感にさいなまれる場合が少なくないのです。
「無縁社会」の根源的問題点
近年は、このような孤独な人々が増えてきている現代の状況を「無縁社会」と呼ぶようになってきています。そして、社会から孤立して生活している人々の大半は高齢者に限らず、「ニート」と呼ばれる若者も含まれ、その数が年々増加傾向にあることで、今後もこの「無縁社会」はさらに広がっていくことが危惧されています。
背景には、むろん少子・高齢化社会という現状があるのでしょうが、特に都市部でこの傾向が強く見られることから、「隣に住んでいる人がどんな人か分からない」という、近代化が進む過程で起きている「地域コミュニティーの消失」に、その根本的要因があると指摘する社会学者もいます。
私たちや私たちの親族が「無縁社会」の住人にならぬよう、少しでも多くの仲間との交流の場を持ち続けていけるような社会にしていきたいものです。
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